今日,親族が亡くなった.突然でもないが,今日がその日だとは思ってもいなかった.生きている間にもう一度,顔くらいは見せておくべきだったかもしれない.相手は私のことを忘れていただろうか.認知症が進んでいて,前にあったときには私のことを覚えていないようだった.微かに分かるようだったが,恐らく覚えていないようだった.あの時見せた子供みたいな目を今でも鮮明に思い出せる.
たとえ,相手が私のことを忘れたとしても,私は覚えているのだからやはり,会いに行くべきだったのだろう.いつその日が来てもおかしくなかったのに,なぜ行かなかったのか.後悔の念があるのは事実.けれども,きっとそれは会いに行かなかったという過去があるから思うだけ.会っていたとしたら,最後に顔を見せられてよかったとは思わないだろう.
思い返してみれば,いい思い出が何も浮かばない.私が覚えているのは認知症が始まったころからの思い出ばかりで,どれもいい思い出ではない気がする.最近はほとんど会う機会はなかったし,その前もよく思い出せない.でも,小さい頃にいろいろよくしてもらった記憶はある.鮮明に思い出すことはできないが,どれも暖かい思い出な気がする.心が暖かくなる,そんな気がするから.
思い出…思い出すから思い出なのか,あるいは思いが出てくるから思い出なのか.私には明確な答えはないが,どちらにしても気持ちのいいものには違いあるまい.
今,私がどうすべきかは分からない.とりあえずは諸々の準備を手伝うだけだ.だから,何も問題はない.そう,問題はない.